2007年 01月 18日

Le Cauchemar de Darwin - ダーウィンの悪夢

今日のロンドンは嵐。強風が吹き荒れ、雨だそうです。でも、午後には晴れるとか。

ところで、一時帰国中に渋谷を歩いていて、ドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」のポスターを見ました。そのときはぴんとこなかったのですが、後で気づいたら、もう1年以上前だと思いますが、以前の職場の知り合いの方(妻の元上司)が、開発関係者だったら必見のおすすめ映画だと言っていたのを思い出しました。その話を聞いたときには、ジュネーブでは上映しておらず、アマゾンを探したのですがDVDは販売していませんでした。

超多忙だった一時帰国中に映画を見に行くことは当然出来なかったので、ロンドンに戻ってからDVDを探してみたら、米、英、日アマゾンにはありませんでしたが、なぜかフランス・アマゾンにあったので早速買ってみました。ちなみに、最近NHKBSでも放映したみたいですね。ちえ。なんだー。

ということで、この映画の感想です。以下、「ネタバレ」注意です。

この映画、タンザニアのビクトリア湖を取り巻く開発の現実を描いたものらしいのですが、率直な感想は。。。なんか違う、でした。

ビクトリア湖ではナイルパーチという巨大魚が放流されて一大産業となったことから、欧州から連日多くの貨物機が到着し、加工された魚の切り身がどんどん欧米や日本に輸出される一方で、街にはストリートチルドレンが溢れ、HIV/AIDSが蔓延し、劣悪な環境での生活を強いられている人たちがいる。ビクトリア湖はナイルパーチによって生態系が破壊され、まもなくナイルパーチですら住めない湖になる恐れもある。さらに、このパイルパーチの輸出に武器の密輸の陰が見え隠れする。。。

このように一見途上国の現状をうまく描いたように見えますが、本当の実態も全体像も見えない。むごい現状を描いてはいるが、本当にそれが全てなのか。ナイルパーチのおかげで豊かになった人がいるはず。また武器の密輸で豊かになった人がいるはず。政治家は?ビジネスマンは?また、ナイルパーチ産業の外で普通に生活している人たちにはどのような影響があったのか。米作農家は?普通にお店などを経営している人たちは?開発援助による格差はどうなったのか?そもそも、ナイルパーチが原因でこのような状況になったのか?もしナイルパーチがいなかったら?

こういった側面、というか問題の本質にはあまり触れず、ひたすらナイルパーチを取り巻く過酷な一面だけを描いたドキュメンタリーです。

また、何が問題なのか、何を描きたいのか作者の意図も読めない。環境破壊?貧困?犯罪?武器密輸?それら全てを含めた、いわゆるdeath spiral?おそらくは全部を描きたかったのではないかと思いますが。。。うまく描けたのか疑問ですね。

なぜ、英語が妙に上手い「画家」の少年が繰り返し登場し、いろいろ語るのか。彼はどう見てもこの世界では「勝ち組」。よい洋服を着て、新品の消しゴムやペンを使って絵を描いています。彼の口から述べられていることが、本当に真実を語っているのか?

運び屋のパイロット達もやたらに出てきますが、彼らは単に雇われた人たちで、何一つ真実を知らないはず。彼らではなく、もっと別なところにナイルパーチのもたらす富を享受している人がいるはず。本当の実態を知っている人がいるはずです。

武器の密輸にしても、運び屋たちが操縦して欧州から到着した飛行機に、いくつか彼らも中身を知らないとされている「貨物」が積まれていること、武器がこの町からアフリカの紛争地帯に流れているという噂。それだけで武器の密輸がなされていると結論づける強引さ。

この映画全体から、たとえば日本でシンナーを吸ったり悪いクスリをしている若者達だけを取材し、これが日本の若者だ!と言い切ってしまうような強引さと浅さを感じました。

現実は映像に描かれた通りだと思いますし、武器密輸もおそらく本当なんでしょう。でも、それだけが現実ではないはずだし、真実だとしたらそれを裏付ける情報を示さないと。表面的な悲惨さに加えて、あいまいな真実らしき「噂」を流すだけで、何一つ本当の真実が見えてこない。。。この映画が説得力に欠けるのは、このあたりに問題があると思います。「Super size me」の監督に同じテーマで映画を撮ってもらったら、もっと違うものになったんじゃないかなと思ったりします。

なお、この映画が原因でナイルパーチの不買運動がおこったとか。。。それは、矛先が違うんじゃないかと思います。我々先進国が途上国の貧困に直結しているのは、グローバル化したこの時代ではほぼ当たり前のこと。我々が着ている洋服も途上国の方がお世辞にもよいとは言えない環境で作られたものが多いと思います。では、途上国で作られて先進国に運ばれてきたものをボイコットすることで、本当に途上国の人たちのためになるのか、考える必要があると思います。。。おっと、これ以上いうとGlobalization反対派の人たちに刺されそうなので、やめとこっと。

そうそう、ちなみに私の買ったのは仏語版。現地の言葉(スワヒリ?)は全て仏語字幕でしたので、もしかして私の仏語力不足で肝心なメッセージを見逃している可能性もあります。とはいえ、その点は割り引いても、まあこんな程度の映画かな。

いずれにせよ、結論。浅すぎ。あまりお勧めしません。
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by kototora | 2007-01-18 17:26 | miscellaneous


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